2012/12/31 群飛するマヒワ(栗東市)

先日、僕の住む栗東市に初雪があった。しんと静まりかえった山あいを歩いていると、「ジュピーンジュピーン」とにぎやかな声が近づいてきた。その正体は、冬越しのために日本へ渡ってくるマヒワ。その動きを見ていると、谷沿いに立ち並ぶヤシャブシの実を食べながら集団で移動しているようで、だれか1羽が飛び立つと群れ全体が一つの塊になって移動する。時に、谷の左にいた集団と谷の右にいた集団が合体し、より大きな塊になったりする。群れになることで天敵であるワシやタカのなかまの目をくらましているのだろう。

2012/12/24 オオオナモミの種子(栗東市)

オオオナモミは服にひっつく実の代表格。セーターなどにひっつくと、毛糸が伸びてしまわぬようはずすのに苦労する。ちょうど今ごろの時期、あちこちで茶色く熟した実を見かける。実をカッターナイフなどで割ってみると、中に2個の種子が入っているのがわかる。この2個の種子は、それぞれ発芽する時期がずれるようになっていて、最初に発芽した方が生育途中で刈られてしまっても、あとからもう一つの種子が発芽し、生育する仕組みになっている。ひっついて運ばれたり、2個の種子を持ったりと、勢力を広げるための戦略は多彩だ。

2012/12/17 タヌキのため糞(守山市)

「なんじゃこれは!」と驚かれた方もいるでしょうし、お菓子でも食べながらご覧になっている方もいるかもしれませんね。大変申し訳なく思いますが、タヌキの面白い習性なのでご紹介させていただきます。これは一頭のタヌキが糞をしたわけではなく、何頭かのタヌキが同じ場所で糞をすることによって作られた糞の山です。こうすることで仲間同士が何かの情報交換をしているのではないかと考えられています。糞の中身はほとんどが植物の種子です。これを調べればどんな種類の実を食べているかがわかります。

2012/12/10 季節はずれの?ママコノシリヌグイ(野洲市)

つい先日、枯れススキに覆われた河川敷を散策していると、枯れ草色の下草の中に鮮やかなピンク色の花をつけたママコノシリヌグイに出会った。花だけ見るとミゾソバ、ヤノネグサ、アキノウナギツカミがよく似ていて、葉の形や付き方が識別のポイントになる。ママコノシリヌグイは写真をご覧いただくと分かる通り、茎に鋭い刺があることに加えて、三角形をした葉の裏にまでも刺がある。ママコノシリヌグイなどと名づけられ気の毒な気もするが、こんな刺のあるもので尻を拭かれたのでは、たまったものではない。

2012/12/3 山里のどんぐり林(高島市)

サクラの葉が散りモミジの紅葉が終盤を迎え、山里のコナラやクヌギなどどんぐりの成る木々が黄褐色に色づく季節になった。赤や黄色に色づく木々のような艶やかさはないが、シックな彩りは時雨の風景によく合う。10月に発売した「どんぐりころころ大図鑑」が全国の図書館に順次置かれているようで、適当に各地の図書館を選んで貸し出し状況などチェックしてみると、多くが「貸出し中」になっている。大人、子どもを問わず人気者のどんぐりは、もうじき落ち葉布団をかぶり、根を出しはじめることだろう。

2012/11/26 葉も顔も紅色(京都市)

山々の木々が紅葉のピークをむかえている。葉が赤く色づいたクマノミズキに腰をかけ、のんびりと日向ぼっこをしているニホンザル。葉の赤さに負けないくらい赤い顔をしている。ちょうどこの時期、ニホンザルは繁殖の時期にあたり、顔とお尻が一段と赤くなる。ちなみに顔とお尻が赤いのは、世界のサルの中でもニホンザルだけらしい。サルの顔がクマノミズキの葉と同じような形をしていて、木の奥でじっと目を閉じていたりすると、顔の赤色と葉の赤色が保護色になるのが面白い。

2012/11/19 ひっつきむし大集合(栗東市)

ひっつきむしコレクションの中から16種類並べてみた。上段左から、ミズヒキ、アメリカセンダングサ、コセンダングサ、半月形が2個くっついたヌスビトハギ、その右にオオオナモミ、ノブキ、フジカンゾウ、その斜め上に三つ並べたキンミズヒキ、その右にセンダングサ、その下に小さなダイコンソウが2個、下段左からタウコギ、コシロノセンダングサ、チカラシバ、イノコズチ、アレチヌスビトハギ、ミズタマソウ。それぞれ釣り針状に曲がった刺や矢のような刺についた逆刺、ベタベタした粘液でひっついて運ばれる。

2012/11/12 エダナナフシに出会う(栗東市)

林の下草にエダナナフシを見つけた。昆虫なので当然6本足だが、長い触覚と前肢を揃えて前にまっすぐ突き出しているので4本足に見える。ナナフシを漢字で書くと「七節」や「竹節虫」となるそうで、なるほど・・・ とうなずける文字列になっている。撮影中、三脚が近くの草を揺らしても、ぴくりとも動かない。動かないことが自分にとって一番安全だということを、よく分かっているらしい。それにしても、鏡もないのに自分の体が枝に似ていることがどうしてわかるのか・・・ ユニークな体型を見ながらつくづく思う。

2012/11/5 早朝に広がる波状雲(栗東市)

早朝カーテンを開けると、少し赤くなった東の空に見事な波状雲が広がっていた。着替えもせずに急いでカメラを取り出し、ベランダから身を乗り出して撮影した。冷たい空気の上に暖かい空気が重なり、その境目に波を打つような気流ができると出現するらしく、今まで何度か波状雲を見ているが、これほど見事な波状雲に出会ったことがない。カメラを持ったままようすを見ていると、雲の谷間が徐々に浅くなり、わずか15分ほどで一面灰色の雲に変化し、天気が下り坂に向かう気配を感じさせた。

2012/10/29 センダングサ見つけた(京都市)

ひっつき虫の季節がやってきた。ひっつき虫とは、刺や粘液で衣服にひっつく植物の実のことで、草原に入るとあちこちにひっついて、取り除くのに苦労させられる。そんなひっつき虫を25種類ほど撮影してあるのだが、このセンダングサが撮れていなかった。昔はどこにでもあり、いつでも撮れると見過ごしてきたが、いざ撮影しようと探してみると外国産のひっつき虫たちに居場所を奪われ、全く姿が見当たらない。あきらめかけた時、運動公園の脇道に黄色い花弁をつけ小さな群生をつくっているのを見つけた。

2012/10/22 奥琵琶湖の風景(長浜市)

久しぶりに琵琶湖北部へ出かけてみた。少し高台から水面をながめていると、風が吹くたびに湖面の輝きがリズミカルに変化しながら駆け回っていた。琵琶湖のプロフィールを簡単に紹介すると、面積は670平方キロメートル、周囲は235キロメートル、最深部は104メートルほど。日本では一番大きな湖であるが、世界的に見ると淡水湖の中で129番目、塩湖も含めると188番目の大きさになるらしい。しかし誕生からは600万年ほど経過していて、古さからいうとバイカル湖、カスピ海についで3番目の古さになる。

2012/10/15 ヒンジガヤツリ(東近江市)

この季節、水田まわりで見られるカヤツリグサ科のなかま。普通に見られるらしいのですが、僕はまだ写真の個体にしか出会ったことがありません。 さて「ヒンジ」とはどういう意味だと思われますか? 3個寄り添った花穂の形がヒントです。 察しの良い方はもうお気づきかもしれませんね。 3個の花穂が「品」に見えませんか。 そこから「品字」と名付けられたそうです。植物の名前には「なるほど〜」と納得させられるものがたくさんあります。 そんな名前の由来を調べてみるのも、植物観察の楽しみかもしれません。

2012/10/8 ホシクサ(甲賀市)

稲刈りがほぼ終わり、黄金色に輝いていた水田が稲藁色に変わった。刈り取られた稲の株付近には小さな植物たちが、待ってましたとばかりに日の光を受け取っている。少し湿り気の残る地面にしゃがみ込みながら、足もとあたりを丹念に見ていくと、ほんの数ミリの大きさしかない花や、妙な形をしたコケのような植物を発見することができる。放射線状に立ち上がる丸い花のようすが星のように見えるので「ホシクサ」。土壌環境の良い水田では、絶滅が危惧されている貴重な植物に出会うこともある。

2012/10/1 オオヒカゲの産卵(栗東市)

名前の通り林縁部の日陰にいることが多く、ご覧の通り色も地味で、成虫は樹液を吸って暮らしているので、一般の人たちにはなじみの薄いチョウだと思う。それでも羽を広げた大きさは7cmほどもあり、チョウマニアの間では人気のあるチョウのひとつとなっている。山間部の休耕田を散策していると、すぐそばのスゲという植物に止まり産卵をはじめた。チョウが去った後、葉の裏を見てみると、まるで真珠を小さくしたような輝きのある卵が10粒きれいに並んで産みつけられていた。幼虫はスゲの葉を食べて成長する。

2012/9/24 タマガヤツリ(栗東市)

秋の水田まわりで撮影していて、見分けで頭を悩ますのがカヤツリグサ科、イネ科、イグサ科のなかまたち。どれもこれも似通っている上に種類も多い。そんな中で、球状のタマガヤツリは見分けやすい。花の作りの特徴を少し専門的に記してみると、花序は10数個の小花が小穂(しょうすい)を形成し、小穂が球状に集まる。この意味分かりますか? この手の図鑑には難しい熟語が次々に出現してくるので、灰色の脳細胞と近くが見えにくくなってきた情けない目を酷使し、なんとか見分けてみようと必死に戦っている。

2012/9/17 何見てんだよ!ハラビロカマキリ(栗東市)

林道の木陰で休んでいたら、すぐ近くでブルブルブルと激しく羽を震わす音が聞こえてきた。トンボがクモの巣にでもかかったかと思い、音のする方に近づいてみるとオニヤンマの姿がすぐ目に入ってきた。クモの巣にかかったにしてはようすがおかしい。なお近づいてみて状況が飲み込めた。枝に止まった瞬間、そこに待ち伏せていたハラビロカマキリに捕獲されてしまったのだ。ヒグラシを捕らえることもあるオニヤンマだが、カマキリに押さえ込まれてしまっては、なすすべがない。レンズを向けていたらカマキリににらまれた。

2012/9/10 マユタテアカネ見事な逆立ち(栗東市)

アカトンボのなかまは顔の模様などが識別ポイントとなるが、このトンボは顔に黒点が二つあり、それがあたかも「眉」のようなのでマユタテアカネと名付けられたとか。これまで夏の暑さを避けて林縁部の木陰で暮らしていたアカトンボたちが、田んぼや草原に現れはじめた。それでもまだ夏の日差しは強く、その暑い日差しが背中にまともに当たることを避けるため、逆立ちすると考えられている。ロンドンオリンピックでは体操選手たちが見事な演技を披露していたが、里に暮らすアカトンボも負けてはいない。

2012/9/3 アメリカザリガニの穴掘り(守山市)

僕が通う水田地帯の稲穂は、すでに穂を垂れていて黄金色に色づいた田んぼもある。田んぼでは稲の生長に合わせて、水を出し入れしながら水管理が行われていて、現在は少し水が入った状態なのだが、ザリガニにとっては水位が浅すぎるらしい。そこでザリガニたちは、乾燥から身を守ろうと、あぜ付近に穴を掘りはじめる。穴の中のようすは分からないが、掘った泥をハサミをつかって地上に運び出してくるようすは、けなげで応援したくなる。数分おきに運び出される泥が入口に積まれていき、独特の穴ができあがる。

2012/8/27 ご存じですか?ハリガネムシ(栗東市)

つい先日出会った、少々気味の悪い生きものをご紹介。オンブバッタのお尻から出ている細長く白い物体がハリガネムシです。成体は水中で暮らし水中に産卵、孵化した幼体をバッタなどが食べると、そのバッタの消化管と体壁のすき間で育ち、この季節肛門近くに穴を開けて外へ出てくるのです。成体は水中でしか生きられないので、一説には脱出時にバッタを水辺に誘導するため、脳に特別な指令を出す物質があるのではないかとも考えられているそうです。そこのあなた、背骨のある動物には寄生しないそうですのでご心配なく。

2012/8/20 ヤブキリ(西浅井町)

ヤブキリを含むキリギリス科は、ササキリ、クサキリ、カヤキリなど名前の似たものが多く時々混同してしまうことがある。その上、ツユムシやクダマキモドキなど姿も似ていたりして、いつまでたっても出会った瞬間にはしっかり判定することができず、図鑑を頼ってしまう。それぞれを1つずつの虫かごに入れて、並べた状態で見比べる訓練をすれば、見分けの能力も強化されるのだろうが、「そのうち覚えられるだろう」とその場しのぎをしているうちに、いまだ未熟なまま早20年が経過してしまった。

2012/8/13 仲良し子ザル(京都市)

猛烈な暑さが辛いのは人間だけではなさそうで、気温が上がるとサルたちも暑さ対策に入る。大人のサルたちは、それぞれお気に入りの木陰に身を置いてお昼寝タイム。子ザルたちは水辺に集まり、水浴び水遊びとはしゃぎまわる。子ザルたちは水際で追いかけっこをしているうちに徐々にテンションが高まり、水に飛び込みはじめると水中で頭をつかんだり足をひっぱったりの小競り合いに発展する。遊び疲れ、体が冷えてくると今度は日向で体を乾かしはじめる。先ほどまでケンカしていた友達とも仲良く並んで日光浴をしていた。

2012/8/6 ムツオレダケ(京都市)

樹木では幹にあたる部分を、竹の場合は稈(かん)とよぶ。竹は普通この稈がまっすぐで、なおかつその繊維に沿ってまっすぐに割れることから、間違ったことがきらいな、正直でまっすぐな性格を「竹を割ったような性格」と表現するが、この竹はそれに当てはまらないユニークな形をしている。あちらこちらの山里などで、一般に栽培されているマダケという品種の変異種らしい。「ムツオレダケを割ったような性格のあなた」それはそれで「竹を割ったような性格」には違いないので、自信をもって生きていきましょう。

2012/7/30 メダカの学校(大津市)

ここ最近、人間の学校では様々な問題が提起されているが、メダカの学校はとても平和でコミカルで、見ているこちらの気持ちもとても穏やかになる。昔は、こんな心安らぐ風景があちらこちらにあり、子供たちもそんな風景の中で、ガキ大将を先頭に仲間どうしで虫採りや魚捕りをしながら、人間関係や命との関わり方を身につけてきたのだろう。昔、田んぼのあぜも、小川も、道も、風景は曲線でできていた。鋭角と直線でできた現代の風景の中で育った子供たち、自然と触れ合うことで、心だけは丸くいて欲しい。

2012/7/23 ヒマワリ畑(兵庫県佐用町)

ヒマワリ畑で有名な兵庫県佐用町に出かけてきた。佐用町は2009年(平成21年)の台風9号により、甚大な被害を受けた町だが、満開のヒマワリ畑を見ているかぎりは、全くその形跡を感じることはできなかった。平日にも関わらずたくさんの観光客が訪れていて、この夏一番の気温を記録した炎天下で、汗だくになりながらヒマワリを楽しんでいた。ここでは、種まきの時期をずらし120万本のヒマワリが7月上旬から8月上旬にかけて順に咲くよう工夫されているので、もうしばらくは満喫することができそうだ。

2012/7/16 ヒョウタンの雄花と雌花(三重県)

僕の撮影フィールドのひとつに、数年前まで小学校の校長先生をされていたお宅の庭がある。ビオトープ、ヒョウタン工芸、写真など多岐にわたり関心がある先生で、自宅から少し離れたアトリエには田んぼ、畑があり、ブルーベリー、イチゴ、スイカ栽培などもされている。工芸品作りのためにヒョウタンも栽培されていて、その生長を撮影させてもらった。ヒョウタンの花は夕方から開きはじめ、朝日が昇ると閉じてしまう。写真左が雌花、中心にオシベが集まる写真右が雄花で、夜の間に「ガ」によって受粉される。

2012/7/9 雨の日のアジサイ(栗東市)

この季節になると、今年こそは「雨」をテーマにした写真をたくさん撮るぞ!と気合いを入れるが、傘を差しながら、いざ雨の中に出ると、機材が濡れないように気を遣い、レンズ交換やフィルム交換のたびに車に戻りと、思うように撮影がはかどらない。その上、手間がかかる割になかなか「雨」が写真に写り込んでくれない。つい先日、野道に咲くアジサイを見つけた。背景は暗い杉林、雨も強く降っていて「雨」を撮るには絶好の条件だ。風に揺れるアジサイが止まるのを待ちながらの撮影で、やっぱり背中がずぶ濡れになった。

2012/7/2 ニホンザルの兄弟(京都市)

気温の上がった午後、木陰で寄り添うニホンザルの兄弟がいました。小さい方は生まれて2週間程、お兄ちゃんは昨年生まれの1歳です。お兄ちゃんの方は普段同じ年齢のサルたちと取っ組み合いをしたり、追いかけっこしたり腕白ぶりを発揮していますが、こうしているとなんだか大人びて見えるのが不思議です。一方今年生まれた子ザルの方ですが、生まれてしばらくは母親にしがみついたまま過ごすものと想像していたので、かなり早い時期から一人遊びをすることに驚かされました。サル山には、まだまだ楽しいことがたくさんありそうです。

2012/6/25 オオミズアオ(守山市)

雨上がりの日、草に止まるオオミズアオを見つけた。オオミズアオはアゲハくらいの大きさで、チョウのように見えるが「ガ」のなかまになる。透き通るような青緑色の体色から、学名の一部にギリシア神話に登場する月の女神「アルテミス」が用いられている。写真の個体は、触覚が発達した櫛状なので「♂」ということがわかる。幼虫はサクラやモミジの葉を食べて成長するが、成虫になると口が退化して、何も食べたり飲んだりしなくなる。撮影後しばらく見ていると、羽を細かく震わせた後、上空へ飛んでいった。

2012/6/18 コナラに産卵するアカシジミ(栗東市)

コナラ林を散策していると、見慣れないチョウが枝先にさかさまに止まっていた。よく見ると、どうやら産卵中。ドングリの成る木は僕の撮影テーマの一つでもあり、ドングリの木と関わりをもつ生き物たちも、当然その撮影対象になる。チョウのマニアにとって、アカシジミはそれほど珍しいチョウではないらしいが、僕にとっては初めての出会い。幼虫はブナ科のコナラやミズナラなどドングリの木の葉を食べて育つ。葉の茂る暗い中、風も吹いていて手ブレが心配。三脚にカメラをセット。風が止む瞬間を狙ってシャッターを切る。

2012/6/11 コナラの樹液に来たゴマダラチョウ(大津市)

チョウは花の蜜に集まるものだと、思い込んでいる方々もいらっしゃるでしょうが、チョウの中には、カブトムシのように樹液に集まる種類も結構多いのです。その中の一種ゴマダラチョウは、幼虫で越冬します。幼虫はエノキという樹木の落ち葉にくっついた状態で越冬しているので、エノキの根元付近の落ち葉を丁寧にめくりながら探すと見つかります。幼虫は春になると幹を登り、エノキの葉を食べながら成長し、蛹になって初夏に羽化します。樹液に来ているときは食事に夢中なので、近づいて観察してもあまり逃げていきません。

2012/6/4 カワガラスの幼鳥(甲賀市)

清流に暮らし、水中にもぐり水生昆虫や小魚を捕らえて食べるカワガラス。街路樹や公園で群れるムクドリくらいの大きさで、治水ダムの水抜き穴や滝の裏側、岩の間にコケを使った巣を作る。カラスという名が付いているが、カラスの仲間ではなく「カーカー」と鳴くわけでもない。幼鳥には細かい模様があるが、親鳥は濃い褐色で模様はない。幼鳥は巣立ちと同時に水にもぐり水中を泳ぎまわる。ファインダー越しに見るその姿は多少不器用に見えるが、水とたわむれることが楽しくて仕方ないといったようすが伝わってくる。

2012/5/28 ケリの偽傷行動(栗東市)

あまり野鳥に興味のない方でも、この季節水田付近や空き地で「ケリケリケリ・・・」と大声で鳴くこの鳥の姿を目にしたことがあるのではないでしょうか。この鳥はチドリのなかまで、水の張られる前の田んぼや、砂利に覆われた空き地のような地面で巣作りをし、人、犬、カラスなどが巣に近づくと、大声で鳴きながら急降下を繰り返し威嚇します。それでも相手が巣から離れないと見ると、今度は自分が怪我をしたように振る舞い、羽を引きずりながら相手を自分に引き寄せて巣から遠ざけます。こちらは何の悪意もないのですが、ケリは真剣です。

2012/5/21 朝露の中のナナホシテントウ(栗東市)

朝露に濡れる野道を歩いていると、足もとのシロツメクサにナナホシテントウが歩いているのが目に留まった。ここで無造作に足を運んでしまうと、せっかくの水滴が壊れてしまう。まず水滴がキラキラ輝いて写る方向を見極めて、あぜをまたぐようにして体を移動させる。そして、ジーンズがじっとりと濡れてしまうことを覚悟しながらそっと膝をつく。次にシャツのひじが泥だらけになることを覚悟してひじを地面につける。あとは風が止まってくれることをただひたすら願いながら、シャッターチャンスを待つ。

2012/5/14 春なのに秋?・・竹の秋(栗東市)

山の木々が新緑の柔らかい緑に染まるころ、竹林は日の光を受けて黄金色に見える。これは竹のなかまが春に黄葉し、落葉するしくみを持っているための現象で、春の季語として「竹の秋」といわれる。落葉時には、すでに新しい葉が針金のように細い形で生まれていて、その葉がどんどん開いていくので、イチョウやモミジが冬の間葉をつけていないように、長期間葉がないという状態にはならない。「竹の秋」に対して、9月から10月にかけて竹の葉が青々しく茂ることから「竹の春」という言葉が秋の季語として使われている。

2012/5/7 クヌギの幼いドングリ(栗東市)

ドングリの木のなかまには、花が咲き受粉したのち5ヶ月ほどで実が熟す種類と、17ヶ月ほどかけて実が熟す種類がある。前種にはコナラ、アラカシ、シラカシなどがあり、後種にはクヌギ、アカガシ、マテバシイなどがある。写真のクヌギ幼実は受粉から12ヶ月ほど過ぎた実で直径はまだ3mmほどしかない。これから秋に向かいどんどん大きくなり、地面に落ちるころには直径が2cmほどのまん丸なドングリになる。幼実の回りに垂れ下がる雄花から花粉が飛び、もうじき同じ枝に生まれたてのドングリも見られるようになる。

2012/4/30 モウソウチクのタケノコ(大津市)

野の草花、山の木々に春が来たように竹林にも春がやってきた。モウソウチクの林下あちこちからタケノコが顔を出し、生長をはじめている。モウソウチクとマダケが竹林の代表格で、その違いはそれぞれの節を見ればわかる。節が1本であればモウソウチク、2本あればマダケである。タケノコはあと3ヶ月もすると、周りにある親の竹と同じ姿、同じ高さになり、その後背が伸びることはない。そんな生長を追いかけてみたら面白いだろうが、目立つところにあるタケノコは、いつの間にか掘り起こされて姿を消してしまう。

2012/4/23 美男?美女?ホンドギツネ(栗東市)

つい先日撮影したホンドギツネ。そろそろ冬毛から夏毛に変わる季節で、いわゆる「きつね色」の中でも「これぞ、こんがりきつね色!」といった体色をしていて、アカギツネの亜種であることを納得できる。自宅から20分ほどにあるこの林は、僕の撮影フィールドの中心でタヌキ、リス、ノネズミ、ノウサギ、シカ、テン、イノシシなどが暮らしている。「豊かな自然」という言葉がよく使われているが、このキツネの目をじっと見ていると、普通の山に普通の動物が、普通に暮らしているということが、とても大切なことなのだとしみじみと思う。

2012/4/16 ハナモモの蜜をなめるヒヨドリ(栗東市)

久しぶりに500mmレンズを持ち出してみた。25年前に購入したレンズなので、オートフォーカスも手ぶれ防止もない。写真データは(キャノンT90、FD500mm、ベルビア100、F4.5 、1/500、ノートリミング)となる。現像の上がったポジをライトボックスに置き、まず全体をながめる。そして構図、露出の気に入ったポジの上にルーペを乗せ、ピントがきていることを念じながらレンズを覗き込む。バッチリならば心の中でガッツポーズが出るし、だめならばへこむ。フィルムカメラは、現像待ちからの葛藤がたまらなく楽しい。

2012/4/9 春爛漫(三重県)

色とりどりのチューリップが花を咲かせ、満開になった桜とともに「春爛漫」を演出していた。このチューリップ園では、チューリップの根元にビオラなどを植えて、地面が花色に染まるよう配慮されていて、花壇全体からいっそうの鮮やかさを感じさせてくれる。青空の下、オシベメシベを見せて風に揺れるチューリップは、日暮れとともに花を閉じはじめ、閉じたまま夜を過ごし、夜明けとともにまた開きはじめる。それを5日程くり返して花を終えるが、開花時期がずれるように植えられているので、もうしばらくは春爛漫を味わえる。

2012/4/2 2年目のチューリップ(栗東市)

根元からの高さは4cm。これがチューリップ?と思われる方が、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。このチューリップは、2010年の春に開花した花を受粉させて種子を採集し、その秋に種まきをして、昨年2011年夏に5mmほどの球根を採取。それを晩秋に鉢植えして生長したようすです。今年は、この写真の状態で夏までを過ごし枯れていきます。枯れた後に球根を掘り出すと昨年より大きな球根が採取できます。そして晩秋にまたそれを鉢に植え直します。花が咲く球根になるまであと3年。長い道のりです。

2012/3/26 ニホンザルうたた寝(京都府)

「春眠暁を覚えず」とは、春の夜は寝心地が良く、つい朝寝坊をしてしまうことらしいが、春の陽気は夜に限らず日中でも眠気を誘ってくる。それは人に限らず、山に暮らすサルたちも同様で、日当たりの良い場所でたたずんでいるうちに、やがて居眠り状態に入ってしまう。そのようすは人に似ていて、初めのうちは目を閉じては開け、また閉じては開け、必死に睡魔と戦っているが、とうとう眠気に負けて寝入ってしまう。そんな姿がどこかの誰かさんに似ているようで、ファインダーを覗きながら思わず笑ってしまう。

2012/3/19 ミツマタの花(京都市)

冬の間、少々寂しい感じが漂っていた植物園に、少しずつ彩りが添えられてきた。このミツマタもそのひとつ。その名の通り枝先が三つに分かれ、その先にほのかに香る花をつける。樹皮の繊維が強く、枝を手で折り取ることはとても難しいらしい。その繊維の特性を生かし、高級和紙の原料になり、虫にも食われにくいので紙幣や株券など重要な紙製品に使われている。もうじき京都府立植物園は桜やチューリップなど花であふれ、景色も人も賑わう季節を向かえる。花を撮る人、鳥を撮る人、カメラもレンズも花盛りになる。

2012/3/12 コハクチョウ北帰はじまる(長浜市)

この冬、琵琶湖には500羽ほどのコハクチョウが渡ってきていたが、先日からの暖かな陽気に誘われたのか、少しずつではあるが北帰がはじまっている。グループごとに琵琶湖の数カ所に分かれて、日々を過ごしていたコハクチョウたちは、北帰が近づくと琵琶湖北部に集合し、なかまたちに旅立ちを呼びかけるように、大声で鳴き合いながら水面を駆け出し、大空へと飛び立っていく。その飛んでいく方向と高さがいつもと違う事で、北帰を感じることができる。そこには、感慨深げにその後ろ姿を見つめる愛鳥家たちがいる。

2012/3/5 冬のカシワの木(長野県大町市)

カシワの木といえば、柏餅を包む大きな葉が知られていて、葉が冬枯れした後も、翌年の新芽が出るまで落ちずに残ることから「代が途切れない」縁起の木として、民家の庭に植えられたりしている。カシワはドングリの成る木でもあり、ドングリの本などに「縁起の木」として紹介しようとすると、生育地が中部地方以北に多く、僕の住む滋賀県では撮影が難しい。そんなわけで、先日大町市まで出かけてきた。片道4時間、撮影時間5分、温泉に一泊、露天風呂にゆったりと浸かり・・・これでは商売あがったりです。

2012/2/27 つららのアクセサリー(守山市)

琵琶湖の南部では、積雪が長く残ることはほとんどなく、天気が回復し太陽が顔を出しはじめると一日足らずで解けてしまう。この日も前の晩に降雪があり、あたりの屋根に数センチの積雪があったが、昼過ぎに雲間から日が差すようになると、雪はあっという間に水滴に変わりポタポタと音を立てながら地面に落ちはじめた。そんな時、気温の上がらない日陰では水滴がつららになり、宝飾品のような美しい形を作り出していた。真ん中の輪が解けて壊れてしまわないよう願いながら、焦りまくりの撮影になった。

2012/2/20 ドングリ林のアカネズミ(栗東市)

山に陽が沈みドングリ林が闇に包まれと、アカネズミの活動が活発になる。アカネズミのお目当ては昨年大量に落ちたドングリの実。昔話「おむすびころりん」では、穴の中から飲めや歌えのネズミの宴が聞こえてくるはずだが、それは心優しいおじいさんの話。僕の場合、ネズミの写真をどう収入に結びつけてやろうか・・などと邪悪な心が満載なので、聞こえてくるのは風で木がきしむ音や、ササの葉がカサカサと触れ合う不気味な音だけ。大判小判は夢のまた夢ということらしい。

2012/2/13 ホットな雪だるま(石川県白山市)

今年、豪雪に覆われた山間の町。この日も70歳を越えた住人が、かんじきを履き、背丈以上もある屋根の雪下ろしに追われていた。どの家の軒下にも壁のような雪の垣根ができていて、日々降り止まぬ雪と格闘されている、地域の皆さんのご苦労が感じられた。そんな民家の片隅に、なんともホットな雪だるまが作られていた。明日、2月14日はバレンタインデー。両想い、片想い、純愛、道ならぬ恋、恋の形はさまざまなれど、どうか貴女の想いが素敵な彼に届きますように・・・

2012/2/6 冬のヨシ原(近江八幡市)

船着き場から盗賊が千両箱を運び出したり、剣客がゆったりと手こぎ船に揺られていたりと、時代劇の舞台として頻繁に登場する近江八幡市のヨシ原で、ヨシ刈りがすすんでいた。ザクッザクッとヨシを刈り込んでいく音が、冷たい空気を伝い聞こえてくる。春に芽吹いたヨシは高さ4mほどにもなり、ヨシ刈りの作業はかなりの重労働になる。広大なヨシ原に刈り取られたヨシが整然と並べられ、昔は水路を船で運ばれていたが現在ではトラックなど陸路で運ばれることが多くなった。

2012/1/30 ニホンザル初めての雪(京都府)

枯れ木のてっぺんに子ザルが座っていた。初めは細い枯れ枝を食べたりしていたのだが、急に降り出してきた雪に興味津々。昨年春に生まれた子ザルにとっては初めて見る雪。空をじっと見上げて、この白い物体がどこから落ちてくるのか思案しているようすが伝わってくる。さて、自分はいったい「初めての雪」をいつ見たのだろうかと振り返ってみるが、まったく思い出すことができない。子ザルにこの雪の記憶はどんな風に残っていくのだろうか。積もった雪で遊ぶ子ザルのようすもぜひ見てみたい。

2012/1/23 群れるトビ(草津市)

冬枯れの木に、トビが群れてとまっていた。スズメやムクドリじゃあるまいし、猛禽類のトビが群れるとは何とも情けない。猛禽類といえばイヌワシやクマタカといったワシやタカのなかまで、どこか孤独なイメージがあり、生きた獲物を捕らえる狩の名手。猛禽のプライドを捨て、人の投げたパンくずを狙うトビには、環境変化で餌となる小動物が激減している今の時代を見据えた、先見の明があったのかもしれない。一見楽な生き方を選択したように見えるトビの「生きる知恵」を、あながちあなどるわけにもいかない。

2012/1/16 雪のアクセサリー(栗東市)

雪のやんだあと、林や草原を散策しているとさまざまな形の雪の形に出会うことができる。草の実や木の芽が、ちょこんと帽子をかぶったように見える雪、枝に沿ってヘビがにょろにょろとはっているように見える雪、そんな雪の形を集めてみるのも楽しみ方の一つだ。先日出会った雪の形は、秋の七草のひとつハギの実に積もっていた雪が、少し溶けはじめたころのようす。林道を歩いていて見つけた「雪の髪飾り」。どんなレンズで、どこから撮ろうか、試行錯誤しているうちに雪がどんどん溶けていく。

2012/1/9 カシノナガキクイムシ幼虫(大津市)

各地で、コナラやミズナラなどドングリのなる木が立ち枯れする被害が広がっている。その原因となるのが、このカシノナガキクイムシだ。夏、成虫は木の幹に直径1mm程の穴を開けて樹内に潜り込み卵を産む。その時メスが幼虫の餌として体に付けて持ち込む「ナラ菌」が引き金になり、樹木は水を運ぶ機能を失ってしまう。この冬、昆虫採集のベテランさんに協力してもらい、伐採されたコナラを削りながら幼虫を探してみた。たった5mmたらずの昆虫が20mにもなる大木を枯らしてしまうことに不思議さを感じる。

2012/1/2 コハクチョウの背伸び(草津市)

コハクチョウは水浴びのあと、背伸びをしながら羽をはばたかせ、体についた汚れを水滴と一緒にはじき飛ばす。大きな体をしたコハクチョウの背伸びは、カモたちの背伸びに比べると格段の迫力があり、ハクチョウ撮影に集まるカメラマンたちの多くが、このシーンを狙っている。コハクチョウの行動パターンを把握していると、背伸び直前から狙いを定めておくことができるのだが、慣れていないと構図合わせが間に合わない。そのあたりのせめぎ合いを楽しみながら、今年も作品作りしていきます。