2013/12/23 空に浮かぶ小舟(栗東市)

「白い雲に乗り 風を追いかける・・・」 松山千春さんの「大いなる愛よ夢よ」の歌い出しの歌詞。空に浮かぶ小舟に乗って、風を追いかけてみたいところだが、雲はあっという間にその形を変えてしまう。大げさに言えば、この瞬間の空は一生に一度出会う空の形ということになる。明日はクリスマスイヴ。大切な人と空を見上げ、愛を語り合うも良し、夢を語り合うも良し。「大いなる愛よ夢よ、この空に描き・・・ 私はただ生きてゆく、この広い大地♪♪」

2013/12/16 モミジのつばさ(栗東市)

上空に寒気が入り込み、山に時雨がやってきた。すでに葉を落としたモミジの木には、たくさんの果実が残されるが、それも時々吹く強い北風に負けて、次々と飛ばされていく。果実は、黒く見える種子の部分を向かい合わせに二つがくっついていて、それぞれに翼がついている。枝から離れる時はひとつずつに分かれ、少し湾曲した翼に風を受け、くるくると回りながら地面に落ちていく。湾曲した翼は、少しでも種子を遠くへ運ぶためのモミジの戦略。写真の果実も、もうじき枝を離れ、春の発芽を待つことになる。

2013/12/9 カスミサンショウウオの冬越し(甲賀市)

体長が10cm前後の小型のサンショウウオ。雑木林に隣接した、湧き水のあるような水田や水路に生息している。最近は水路がコンクリートで囲まれたりして、その姿を見ることが少なくなってきた。冬の田んぼ散策の楽しみは、冬越しをする生きもの探し。田んぼ脇に置かれた石や木の板、土嚢袋をそっとどかしてみると、その下にカエルやサンショウウオ、コオイムシなどがじっと冬越ししているのを見ることができる。石をめくられたサンショウウオ・・・ 急に明るくなり、びっくりしたに違いない。急いで撮影を済ませ、石を元に戻しておいた。

2013/12/2 カワムツを捕食したヤマセミ(栗東市)

先日から、古い写真を整理中。そこで約25年前に撮影したヤマセミ写真を今週の1枚に。カメラは京都で購入した中古のペンタックスMEスーパー。レンズは中古の50mmマクロ。合わせて当時4万円程。ストロボはサンパックaout30SR4灯を1/16発光。フィルムはKR(コダクローム)ASA64。F5.6で1/125。15mほど離れたブラインドテントから、延長電磁レリーズでシャッターを切った。魚を捕る瞬間に、水中メガネの役目をはたす瞬膜がヤマセミの目をカバーする。カメラとヤマセミの距離約50cm。掲載写真は35mmノートリミング。

2013/11/25 上空を警戒するタゲリ(栗東市)

日本には、主に冬鳥として渡ってくるタゲリ。ハトを一回り大きくしたくらいの大きさで、光沢のある羽と、長く伸びた頭の冠羽が特長。滋賀県では、冬枯れした田んぼや水の抜かれた溜池などでよく見かける。人は上空を飛ぶ飛行機などを見る時、その方向に顔を向け両目で見るが、野鳥は天敵が上空に現れると、写真のように片目でその動きを追いかける。どんどん近づいてくるタゲリに「それ以上近づいたら画面に入らなくなるぞ〜」とささやきながら撮影していると、大きな黒い影がゆっくりと田んぼを横切った。上空を猛禽類が通過したに違いない。

2013/11/18 ミゾソバの戦略(栗東市)

この季節、水田わきの水路などでピンク色の花を咲かせ群生するミゾソバ。初夏に発芽し、秋に花を咲かせ種子をつくる一年草。田んぼまわりに生育するので、種子をつくるまでに刈り取られてしまうことが多いが、翌年また同じ場所で群生する。その理由は地中に閉鎖花を持つことにある。閉鎖花とは、花を開くことなく自家受粉し種子をつくる花。閉鎖花を地中に持つことで、地上の花を刈られてしまっても、地中でしっかりと種子がつくられることになる。咲いているミゾソバをそっと引き抜いてみると、たくさんの閉鎖花を見ることができる。

2013/11/11 メナモミはひっつきむし(栗東市)

林道や草原を歩いていて、服やズボンに刺のある草の種がひっついて、取り除くのに苦労した経験はないだろうか。このメナモミもひっついて運ばれる種をつくる。よく見かけるのは、山里の林道沿い。背丈は1mほどになり、黄色い花を咲かせるが、それほど目立たないので認知度は低い。花を囲むようにヒトデのような総苞片があり、食虫植物で見られるような粘液が水玉状に並んでいるのが面白い。知らぬ間にそのヒトデが、黒い種子を包んだまま腰のあたりにひっついていて「やられた〜」ということになる。ひっつきむしには刺派と粘着派がある。

2013/11/4 アキアカネの連結飛行(甲賀市)

ひと雨ごとに朝晩の気温が下がり、山里にも本格的な秋が訪れた。稲刈りが終わりしばらくたった水田には、稲を干すために組んだ竹組が残され、アキアカネが止まったりしていた。稲刈り機のキャタピラがえぐってできた水たまりは、そんなアキアカネにとって大切な産卵場所になる。同じアカネ属のナツアカネやノシメトンボは連結したまま空中から卵を散布するが、アキアカネは雄と雌が連結して飛びながら、水たまりや水際の土中に尾を打ち付け産卵していく。産みたての卵は半透明で、翌日には濃い褐色になる。

2013/10/28 冬越し間近のベニシジミの幼虫(栗東市)

産卵から25日目のベニシジミの幼虫。先月田んぼの植物を撮影していると、ベニシジミがすぐそばにあったスイバの葉裏に産卵をしているのを見つけた。卵の直径はわずか0.6mmほど。知らずに見たら、葉裏に白い砂粒が付着しているようにしか見えない。それがたった25日間で12mmほどの幼虫になった。葉の上を歩いているときもほとんど顔を見せることがない。写真をご覧いただいて、頭はどこに・・・? 写真でいうと上側の胴体下に顔が隠れていることになる。急に寒くなった今日この頃、もうじき幼虫のまま冬越しの準備に入る。

2013/10/21 山里の白ギツネ(高島市)

山里の田舎道を車で走っていると、山際にある田んぼ道に白っぽい動物が見えた。のんびり歩くようすから、どこかの飼い犬が自由気ままに散歩でもしているのかと思ったが、どうも尾の形がキツネっぽく見える。車を止めて双眼鏡で見るとやはりキツネだ。車内で500mmレンズをセットして、キツネのいる田んぼ道に車をゆっくり近づけていく。キタキツネは別にして、野生動物は人の気配がするとすぐに逃げてしまうものだが、車を近づけてもそれほど気に留めるようすもなく撮影させてくれた。ファインダーに映る白ギツネは、とても優しい目をしていた。

2013/10/14 イチモンジセセリ幼虫の巣作り(栗東市)

イチモンジセセリの幼虫が、稲の葉をまるめて巣作りをするようすを観察してみた。まず葉の片側に口からはき出した糸を固定し、糸を出したまま上半身を起こし反対側に糸を固定する。最初は糸が細くて見えにくいが、体を左右に振りながら糸を往復させていくごとに、白い糸がはっきりと見えてくるようになる。幼虫は警戒心が強く、危険を感じると葉の両端がくっつくほどに糸でつづり、外からは体が全く見えないような細い筒状の巣にしてしまう。その後は風が吹こうと雨が降ろうと、数日間外へ出てこないこともある。

2013/10/7 逃げ迷うヒミズ(甲賀市)

田んぼの撮影をしていると、今は水のない小さな水路から「チーチー」と声が聞こえてきた。ネズミではないかと予想し、足を忍ばせ声のそばに近寄ってみた。声は、小さな水路を渡すように置かれた木板の下から聞こえている。そっと覗き込んで見ると、黒くて小さな生きものが2匹、並んでいるのが見えた。木板をめくれば逃げてしまうことは覚悟し、ほんの少しずらしてみると一匹はあっという間に草の中へ、もう一匹は逃げ遅れ慌ててしまったのか、硬い地面に鼻面をあてて前に進めない。可愛いヒミズは小さなモグラのなかま。

2013/9/30 イチモンジ?チャバネ?セセリの幼虫(栗東市)

稲刈り直前の水田で、稲の葉の両端を糸でつづり、その中でじっとしている幼虫を見つけた。イチモンジセセリかチャバネセセリの幼虫と思われるが、体長が4mmほどの幼齢なので、はっきりとは分からない。両者とも幼虫はイネ科の葉を食草とし、写真でも幼虫の住みかの上が少し食べられている。この時期に誕生した幼虫は、稲刈り後の稲株などにもぐり込み越冬し、春に羽化すると田植えされた早苗に産卵をする。葉を食べてしまうので、稲の害虫とされているが、カエルやクモたちにとっては大切な獲物になる。

2013/9/23 キカシグサの花(栗東市)

稲刈りの進む水田で、稲株の根元にひっそりと花をつけるキカシグサ。写真だと大きさがわかりにくいが、背丈は10cmほどで花の直径は2mmほど。とても小さな花なので、よほど注意して見ないと花が咲いていることに気付かない。花が葉の腋に一つずつ咲くことが特徴で、葉の腋にたくさんの花をつけるヒメミソハギのなかまと区別できる。稲刈りが終了した水田では、今まで稲穂に隠れていた地面が見渡せるようになり、夏の間にこっそり生育していた植物たちに出会うことができる。ただし、腰をかがめたままのマクロ撮影はかなりきつい。

2013/9/16 ツマグロヨコバイ♂と♀(三重県伊賀市)

生きもの撮影していると、「いつでも撮れるから」という理由で、普段見過ごしている生きものたちがいる。ツマグロヨコバイもそのひとつ。ところがこの夏、田んぼの生き物として紹介しようと撮影に出かけると、その姿がどこにもない。市町をまたぎ車で走り回っても見つからない。夜間、街灯に集まっているはずと出かけてみるが姿がない。ところが、県をまたぎ三重県まで出向いてみると、あぜ近くの稲穂に群れている水田があった。長年農薬使用のない、他とは隔離された環境にある水田だ。中央にいる羽先の黒いのが♂、その両脇が♀になる。

2013/9/9 ホシクサの季節(甲賀市)

真上から見ると、球形の頭花が星を散りばめたように見えるホシクサ。稲刈りを待つこの時期、水は抜かれ、花茎は水上にあるが、水田にたっぷりと水があるころには、水草のように水中で生長する。その時、水中で光合成するため、濁りの少ない水田でないと育つことができない。そのため、除草剤や化学肥料の影響を受けない、環境の良い水田でないと出会うことはなく、ホシクサに出会うと他の植物、生きものたちも豊富にいるような気がして、ついつい足を止め、水田まわりや稲のすき間に目を凝らしてしまう。

2013/9/2 ガ? セミ? ベッコウハゴロモ(栗東市)

ベッコウハゴロモ(鼈甲羽衣)とはなんとも高貴で高級感のある名前だが、その姿は羽を見ればガ? 顔を見るとセミ? といった不思議な生き物である。一見、羽にある帯は白く見えるが、注意深く見れば透き通っているのがわかる。ハゴロモは半翅目に属し、ガよりもセミやカメムシ、ヨコバイに近いなかまになる。幼虫がまたユニークで、お尻にロウ物質でできたタンポポの綿毛のようなものをつけている。この写真はイネの葉に止まっているところを撮影したものだが、イネの害虫ではなく、クズやウツギ、ミカンなどの茎からその汁を吸う。

2013/8/26 クヌギのドングリ1年生と2年生(草津市)

ドングリといえば秋というイメージがあるが、ドングリは春に受粉し実を結び、少しずつ生長していく。球形のドングリになるクヌギなどは、春から生長をはじめたドングリが、18ヶ月後の翌年秋に熟したドングリになる。ということで、今の季節撮影した写真のドングリに注目して欲しい。右にある緑色のドングリが昨年春に受粉したドングリで、受粉からおよそ16ヶ月目。左端の葉のつけ根に2個並んだドングリが、今年の春から生長をはじめた4ヶ月目のドングリだ。同じ枝に1年生と2年生がそろって生長しているのが観察できる。

2013/8/19 受粉した稲(栗東市)

あちこちの水田で、稲の開花がはじまっている。稲の花は、日当たりのよい籾から咲きはじめ、一つ一つの花は40分程で閉じてしまうが、9時頃から数分おきに順番に咲いていくので、午前中いっぱいは観察することができる。稲は花びらがなく「えい」(籾殻になる部分)が開く開花となるが、オシベが外へ出てくる時に「えい」の内部にあるメシベに花粉をつけて出てくるので、開花時には受粉が完了している。写真は閉じたばかりの「えい」を開いて撮影したもので、メシベに花粉がついて、黄色く染まっているのがわかる。

2013/8/12 ハスのつぼみで逆立ちするチョウトンボ(野洲市)

ハスが植栽されている小さな池で、たくさんのチョウトンボが乱舞していた。見た目は可憐で美しいが、縄張り意識は強く自分の縄張りに入ってくる相手に対しては、すぐに追い出しにかかる。チョウトンボは名前の通り、チョウのようにヒラヒラと舞うように飛翔するので、縄張り争いになると文字通り「乱舞」といった感じになる。この日は日差しが強く気温が高かったため、背中に直射日光が当たるのを嫌い、逆立ち姿勢をとる姿があちこちで見られたが、暑いのはこちらも同じ。狙ったつぼみに来てくれるのを待つ間に、全身汗だくになった。

2013/8/5 モツゴの特徴は受け口(野洲市)

別名クチボソとよばれるほど小さな口で、上を向いた受け口状になるのがモツゴの特徴である。田植えのころ水田横の水路をタモ網でザクザクすると、子ブナ、メダカなどとともに網に入る。そのころ捕れる2〜3cmの幼魚には、体の中央を口先から尾びれ基部まで青黒い線がくっきりと入っていて、それが特徴的に見える。写真の若魚もなごりは見られるが、この線は生息環境などによっても濃淡があるらしい。体が細長いタイプのタモロコによく似ているが、やはり「受け口」が一番の見分けポイントになる。

2013/7/29 メダカとグロキディウム(栗東市)

グロキディウムとは何?と疑問を持たれた方が、たくさんおられるのではないでしょうか。メダカのヒレに注目して下さい。ヒレに付着している小さな白い顆粒状の物体が、グロキディウムです。グロキディウムとは、湖沼に棲むイシガイのなかまなど、二枚貝の幼生です。受精した貝は10日ほどすると幼生を水中に放出するのですが、その幼生が稚貝になるまでの約2週間、ヒレやエラに寄生して生活します。その後水底に落ちて幼貝、成貝へと成長していきます。自然界では、あまり関係のなさそうな生き物たちも、どこかでつながっているのですね。

2013/7/22 アオバズク木漏れ日の中で(三重県)

アオバズクは、5月初旬に東南アジアなど南の国から日本へ渡ってくるフクロウのなかま。平野部や低山地の鎮守の森で夕刻から「ホーホー、ホーホー」と鳴き、夜間に活動し昆虫を主食にしている。ハトくらいの大きさで、大木に開いた洞で子育てをし、7月中旬に雛が巣立つと秋には南の国へと帰っていく。営巣中は、日中巣を見守るように枝に止まったまま、時折羽づくろいをするくらいでほとんど動くことはない。逆光の日差しが葉を輝かせはじめた時、ふくらませた羽毛が蓑をまとったように見える、アオバズク独特のポーズを披露してくれた。

2013/7/15 水田のニゴロブナ幼魚(野洲市)

琵琶湖周辺には、農地拡大などで分断された琵琶湖から水路へ、水路から水田へとつながっていた魚の産卵行動を回復させるため、人工的に魚道が設置された「魚のゆりかご水田」と名付けられた水田がある。水田は水深が浅く、適度な水温が保たれ、餌になるプランクトンが豊富であること、天敵となる外来魚が侵入できないことなどから、幼魚の成長にはもってこいの環境になる。写真のニゴロブナは体長が15mm、成魚になると30cmほどになり、琵琶湖名産の「ふな寿司」にはこのニゴロブナが使われる。

2013/7/8 マルタニシの成貝と幼貝(栗東市)

僕の田んぼ撮影フィールドで見られるタニシのなかまは、主にマルタニシ、オオタニシ、ヒメタニシだ。昔、マルタニシはどこにでもいたのだが、農地改良などでかなり減少傾向にあるように感じている。マルタニシは卵を殻の中で育て、幼貝として外へ産み出す。写真の幼貝は生まれてから一週間ほどで、稲の茎を登ってみたり、成貝の背中に乗ってみたりと、見ていてのんびりした気分になれる。生まれたばかりの幼貝でも、種類によって殻のてっぺんが尖っているもの、まるいもの、毛深いものなど見分けのポイントがいくつかある。

2013/7/1 ヴォーヴォーと鳴くウシガエル(大津市)

夜、池の縁にウシガエルがいるのを見つけた。意外とウシガエルは警戒心が強く、あまり近づくことができないのだが、このカエルはペンライトをあててもさほど気にするようすも見せず、池の方をじっと見ていた。これは鳴いているシーンが撮れる可能性があると判断し、じっと待つことにした。僕の気配を感じたのか、池のあちこちから聞こえていたヴォーヴォーという鳴き声が一斉にとまり、静かな暗闇に包まれた。しばらくして一匹のウシガエルが鳴きはじめると、それに負けまいとまた一斉に鳴きはじめた。

2013/6/24 シマヘビがモリアオガエルを捕食(甲賀市)

道端にある小さな池で、毎年モリアオガエルが産卵している。昼間その池に行ってみると、たくさんのモリアオガエルが池の中や池の縁、池に張り出したコナラの枝などで休息したり、鳴き合ったりしていた。この池にはトノサマガエルもたくさんいて、ヘビにとっては豪華食べ放題レストランになっている。ざっと見ただけで5匹のヘビがカエルを狙い、音も立てずニョロニョロと獲物に近づいていく。「危ない!」と思った瞬間、枝上にいた大きなモリアオガエルがシマヘビに捕まった。体で締めつけながら、1時間以上もかけて呑み込んでいった。

2013/6/17 大声で鳴くシブイロカヤキリモドキ(大津市)

山里までホタルのようすを見に行くと、水田横のササ薮から「ジャ〜〜〜〜」と大きな虫の音が聞こえてきた。大声といえば、真っ先に思い浮かぶのがカヤキリだが鳴く季節が違う。初夏に鳴くというとクビキリギスが思い浮かぶが、これは声が違う。鳴き声をたよりに暗闇にペンライトを向けてみるが、大声が反響してその方向がなかなか掴みきれない。ようやくその姿を見つけたのだが、今まで出会ったことのない短足で地味なやつ。「お前は誰?」と問いかけながら鳴く姿を撮影しておき、図鑑を調べ正体が判明。成虫で越冬するらしい。

2013/6/10 ヤマトゴマフガムシ(東近江市)

田植えの終わった水田をじっと覗き込んでみると、水中をまるで宇宙船のように素早く動き回る小さな虫たちがいることに気付く。その正体はゲンゴロウやガムシのなかまたち。体長は2mmから5mmの超小型で、その姿は黒色や茶色に見えるが、小さな網ですくい捕って拡大してみると、思いのほか美しい色をしている。体長4mmほどのヤマトゴマフガムシも、田んぼで泳ぐ姿は泥のような色に見えるが、マクロで大きく撮影してみると黄金色に輝いているのがわかる。田んぼでは、小さな宝石昆虫たちが元気に活動している。

2013/6/3 水田で餌をとるケリの雛(栗東市)

タイトルは「ケリの雛」としてみたが、巣立ちから1ヶ月が過ぎ、嘴の色も黄色と黒色に色づき、すでに若鳥といったほうが良いかもしれない。この水田では親鳥が見守る中で3羽の雛が順調に育っている。僕が車の中から撮影していると、1羽の雛がどんどんどんどん近づいてきた。近づいてくれるのはうれしいことなのだが、それ以上近づくとファインダーからはみ出してしまう。親はそんな雛の行動が心配なようで「ケリケリケリケリケリ・・・」と細かく鳴いて警戒を呼びかけるが、度胸満点の雛は堂々と車の真横を歩いていた。

2013/5/27 吸蜜するヒメアカタテハ(栗東市)

「水田まわりの小さな生き物」をテーマに撮影していると、ムラサキサギゴケにヒメアカタテハがやって来た。自分のいる場所からの距離は3mほど。膝をついたままそっと近づくが、手前の草が邪魔になって吸蜜のようすがよく見えない。今度は身を伏せるように腹ばいになって、ほふく前進で距離をつめる。一度は気付かれ逃げられてしまったが、僕の頭の上あたりを一周して、また戻ってきてくれた。口吻をストローのように伸ばす瞬間を狙いシャッターを切りながら、「まだ飛ぶなよ、もう1カット」と語りかける。

2013/5/20 カエルを捕食したチュウサギ(守山市)

田植えの始まった水田で、獲物を探すチュウサギを狙ってみた。畦の陰にカエルが潜んでいることを知っているのだろう、畦に沿ってゆっくりと歩を進める。何か見つけたのか、足を止めてすっと首を伸ばした。次の瞬間、超ハイスピードでくちばしを突っ込むと、そこには大きなカエルがしっかりと捕らえられていた。この水田にはナゴヤダルマガエルとトノサマガエルが生息していて、背中を見ないと見分けがつかない。ファインダーを覗きながら「カエルの背中を見せて!」と心の叫びを上げてみたが、あっという間に呑み込まれてしまった。

2013/5/13 シオヤトンボ羽化(栗東市)

つい先日、湿地のような休耕田で、シオヤトンボの羽化を見つけた。時間は午前10時、ぬかるみから5cmほどの高さにとまり、羽を伸ばしはじめているところだった。あたりを見まわしてみると、あちらこちらで羽化途中の姿が見られ、まさに集団羽化の真っ最中。よく見ていると、これから羽化しようとするヤゴが、泥の中から草によじ登ろうとする姿もあり、昼間に羽化することにあまり抵抗がないように見えた。周辺では、すでに成熟した銀灰色の♂と黄褐色の♀が交尾し、盛んに産卵する姿もあった。

2013/5/6 ウマノオバチ(東近江市)

花の咲きはじめたドングリ林を散策していたら、アラカシの葉にウマノオバチがとまっていた。 体長の5〜6倍もある長い産卵管が、馬の尾のように見えるのが名前の由来らしく、産卵管は15cmほどの長さがある。この長い産卵管を使い、樹木内部に潜むカミキリムシやボクトウガなどの幼虫に卵を産みつける。野鳥の中にもサンコウチョウという尾の長い鳥がいるが、ウマノオバチもサンコウチョウも、飛翔のようすを見ていると、尾がゆらゆらと揺れて飛びにくそうに見える。産卵やお洒落のために伸びた尾は、時に不便なこともあるようだ。

2013/4/28 イカリソウ(高島市)

雪が解け、日に日に暖かい日差しが差し込むようになってきた林道に、フデリンドウ、ニシキゴロモ、カタクリ、ヤマエンゴサク、イチリンソウなど可憐な花が咲いていた。そんな花たちを撮影しているときに一番困るのが、花を揺らすほどに吹く風、日なたと日陰のコントラスト、そして背景の処理といったところだろうか。僕はいまだにフィルムカメラを使っているので、カメラの絞り込みレバーで画像を確認しながらの撮影になる。逆光の木漏れ日で、ハート型の葉が透けて見えるのが気に入って、イカリソウを撮影してみた。

2013/4/22 紅一点(三重県桑名市)

桑名市の観光名所「なばなの里」、黄色のチューリップ畑の真ん中に、深紅のチューリップが一輪。意図して植えられたものなのか、たまたま偶然に球根が紛れ込んだものなのか・・・ この光景に出会った瞬間、これぞ「紅一点」と感激しながらシャッターを切った。この深紅の花が、まわりを取り囲む黄色の花たちよりも背が高く、頭一つ出ているのも出来すぎといえるほどの演出になっている。この写真を見ていただければ、だれもが「紅一点」のタイトルに納得していただけるのではないだろうか。

2013/4/15 水路のヌマエビ(栗東市)

田んぼではそろそろ水を入れる準備が始まっていて、湿る程度にしか水のなかった水路にも、ため池や小川から水が流されるようになってきた。そんな水路をちょっと覗いてみると、何やら生きものの気配がしたので、車に積んであった網でガサガサやってみると、ドジョウ、スジエビ、そして写真のヌマエビが入り込んでいた。体長は2cmほど、エビやカニに関してはまったくの勉強不足なので、いろいろ調べてみるとヌマエビとヌカエビの見分け方など、たくさんの記述が出てくる。エビ、カニの見分けもなかなか手強そうだ。

2013/4/8 エナガの巣作り(野洲市)

木々の芽吹きを撮影していると、「ジュリジュリジュリ・・・」と鳴きながら、エナガのつがいが何度も頭上を往復していることに気がついた。ようすを見ていると、くちばしに巣材をくわえているようで、どうやら巣作りの真っ最中らしい。エナガの巣材は主にウメノキゴケとクモの糸を集めたものを外壁に使い、卵を暖める巣の中にはたくさんの羽毛が敷かれている。外壁は弾力があり、中はふわふわしていて暖かい作りになっている。写真で見ると、目立つ場所に巣作りをしているように見えるが、抱卵のころには木の葉が広がりすっかり巣は見えなくなる。

2013/4/1 田起こしでやってきたキジ(草津市)

普段は草原や藪の中に姿を潜めているキジが、土起こしが終わったばかりの田んぼに姿を現した。大きな体の割に臆病で、少しでも危険を感じると一目散に身を隠すことのできる場所に逃げ込んでしまうのだが、土の中から掘り起こされた小さな生きものを探して、こんな目立つ場所に現れたということは、よほどお腹をすかせていたに違いない。それでも遠くに歩く人を見つけただけで、畦とうねのへこみに身を伏せたりして、やはり落ち着きがない。僕はというと、20mほど離れた小屋の陰から狙っていたので、気付かれることなく撮影できた。

2013/3/25 ひっつき虫ダイコンソウの発芽(栗東市)

ここ最近は、時に初夏を感じさせるほどの暖かい日が訪れるようになった。その暖かさに誘われるように、田んぼの畦や林道脇で昨年秋に落ちた種子から新しい命が誕生し、土色の中に淡い緑が目立つようになってきた。釣り針型に曲がった刺で、動物などにひっついて運ばれる「ひっつき虫」のなかま、ダイコンソウも殻を頭に乗せたまま発芽しはじめた。現在の身長は5mmほどだが、夏までには50cmほどに生長し、5弁の黄色い花をつける。秋にはたくさんのひっつき虫を果実として身につけて、運ばれるチャンスをじっと待つ。

2013/3/18 花粉症に悩むニホンザル(京都市)

近畿地方では、現在スギ花粉の飛散に加え、ヒノキの花粉も飛びはじめている。花粉症に悩まされている方々にとっては、辛い日々が続いていることだろう。花粉症は今や人間だけでなく、山に暮らすニホンザルにもその症状が現れている。写真に写る22歳のお嬢さんは、目の周辺が腫れ涙をためている。ようすを見ていると、鼻水を垂らしながら大きなくしゃみをすることもあり、かわいそうに美人台無しである。130頭程の群れの中でなぜか彼女だけが重症で、遺伝的な要因があるのかないのか、今のところ不明のようだ。

2013/3/11 あぜの花にやって来たカワラヒワ(守山市)

今の季節、あぜ道でいち早く花をつけるのは、秋に芽生えて冬を越した「越年草」や、地下茎や根で増えながら生長し、数年間花をつける「多年草」である。食べ物の少ない時期、この草花の種子が鳥たちのごちそうになる。あぜ道から少し離れたところで、500mmレンズを構えて待っていると「キリキリ、コロコロ」と鳴き交わしながら10羽ほどのカワラヒワが舞い下りてきた。意外に警戒心が強く、シャッター音が気になったのか4、5枚撮影したところで、一羽が飛び立つとそれに続くように次々と飛び立っていった。

2013/3/4 ザリガニ見つけたハシボソガラス(守山市)

田の土を掘り起こすトラクターの後ろをついて歩いていたハシボソガラスが、動きを止めて土の中にくちばしを突っ込んだ。 「何か見つけた」と確信しながらファインダーを覗いていると、「???」。 小さなハサミが見えたような気がするが、泥だらけでよく分からない。 現像が上がったフィルムをルーペで覗いてみると、どうやら子ザリガニを2匹くわえているようで、この写真をザリガニの本で使うとすれば「土の中で冬眠する子ザリガニにも、危険がせまってくることがあるよ」といった文章が添えられることになるだろうか。

2013/2/25 にわか雪(栗東市)

先ほどまで日が差していた空に、雪雲が流れ込んできて一気に雪の粒が舞い落ちてきた。草原は無風で、雪はゆっくり落ちてきている。雲の切れ間から時々日が差すと、セイタカアワダチソウの綿毛と雪が逆光でとても美しく見えた。それをなんとか写真にしようと、あちこち動き回っていると、気づけば体もカメラもレンズもかなりびっしょり。あわてて車に戻りカメラの手入れ。まず水気をざっと拭き取り、レンズをはずしボディーとともにダッシュボードの上に置く。ヒーターとエアコンを同時に作動させて乾燥させる。雪の日の撮影はこの繰り返しになる。

2013/2/18 幼虫を見つけたハクセキレイ(守山市)

稲株や2番穂で、枯れ草色に見えていた水田にトラクターが入り、土が起こされる風景があちらこちらで見られる季節になってきた。そんなトラクターの周辺には、たくさんの鳥たちが集まってくる。この時期に集まる鳥はハクセキレイ、セグロセキレイ、カラス、トビ、ケリ、ムクドリ、ツグミ、モズなど。お目当ては、掘り起こされた土の中から出てくる冬眠中のカエルや昆虫たち。何を食べているかを写真で見せようとすると、かなり近距離で撮影しなければならない。運が7割、粘りが2割、撮影技術が1割といったところでしょうか・・・

2013/2/11 ナガサキアゲハの蛹(守山市)

ナガサキアゲハは本来南方系のチョウであったが、温暖化の影響で生息域を北へ拡げ、現在は関東地方でもその姿を見ることができる。写真の蛹は、つい先日ナツミカンの木で見つけた蛹で、さほど大きくもない木に4つの蛹があった。撮影中に、その木を栽培している農家さんがミカンの収穫にやってきて、蛹を撮影していることを伝えると大きな実を2個くださった。早速その場でいただいてみると、とてもみずみずしく甘酸っぱさが一気に口の中に広がった。というわけで背景に写る実は、撮影後すぐに僕の胃の中へとしまい込まれたことになる。

2013/2/4 節分の雪だるま(石川県白山市)

「節分」とは読んで字のごとく「季節を分ける」季節の変わり目で、本来は立春、立夏、立秋、立冬の前日を指すが、立春が1年のはじまりとして尊ばれたため、「節分」といえば2月の節分を指すようになったらしい。ちょうど節分のころ、たくさんの雪だるまが各民家の前に作られる白山市白峰の集落で、可愛い鬼を見つけた。角と口はニンジン、眉はインゲン、目はシメジ、鼻はキンカン、髪はキャベツ。こんな鬼ばかりだと「福は内」「鬼も内」となるのだろうが、内に入れては解けてしまうので、やっぱり「鬼は外」で良いのかもしれない。

2013/1/28 雪の日のホオジロ(大津市)

冬の生きものを撮影するとき、一番気を遣うのは生きもの周りの風景だ。例えば背景が常緑樹になると、季節感がうまく表現できない。しかし、積雪のある日にはそんな気遣いもなく撮影に集中できる。積雪の風景の中にぼたん雪のような大きな雪が、はらはらとゆっくり落ちてきてくれると、最高のシャッターチャンスになる。雪がなければ、枯れたセイタカアワダチソウにただ止まっているだけのホオジロ写真も、雪が添えられることで、そこから伝わる空気感がかなり違ってくる。僕の住むところは雪が少ないので、降雪の日は貴重な撮影日になる。

2013/1/21 氷で遊ぶニホンザル(京都市)

サル山の水たまりに氷が張っていた。サルたちの性格もさまざまで、ちょこっと触れてはみるものの腰が引けてる者、おそるおそるペロペロと氷を舐める者。体重をかけてようすをうかがう者。やがてパリッと氷が割れると、一番のわんぱく小僧が先頭を切り、氷のかけらで遊びはじめた。両手で氷を持ち、まずはその正体を確かめるようにじっくりと観察し、氷に閉じ込められた枝や葉を引っ張り出しながら、顔を近づけ舐めてみたり、かじってみたり・・・ それを興味津々に見ていたサルたちも、残り氷の小さなかけらで遊びはじめた。

2013/1/14 雪の中で見つけたヨモギハムシ(東近江市)

先週、うっすらと雪化粧した水田まわりを散策していると、雪が解けはじめた畦に瑠璃色に輝くヨモギハムシを見つけた。空は灰色、風は冷たく植物たちは地面にべたっと葉を広げ、生きものの気配などまったくしない風景の中に、テントウムシを一回り大きくしたほどの大きさの昆虫が、元気に動き回っていることなど、多くの人たちは気づくことはないだろう。大きなお腹をしているので、おそらく産卵前。ほとんど飛ぶことはなく、指で触れると脚を縮めてコロンと草から転げ落ちる。こんな出会いが楽しくて、カメラぶらさげ今日も出かける。

2013/1/7 空から来た白ヘビ(栗東市)

今年最初の「今週の1枚」は縁起が良いとされる白ヘビです。本来の白ヘビはアオダイショウのアルビノ(白化個体)ですが、この白ヘビは空から舞い降りてきた雪の造形です。枝に積もっていた雪が、気温の上昇とともに形をくずさないまま枝からすべり落ち、こんな形を作ります。一度すべり落ちた雪ヘビは、すでに解けやすい状態になっているので、あっという間に形を変えながら姿を消してしまいます。今年も自然の中で見つけた楽しい写真を紹介していきたいと思っています。本年もよろしくお願いいたします。